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上海のバス

 中国ブロガーきってのバスマスターと言えばあおいさまです。そのバス好きはもしかすると路線バスが通っているところなら、新疆でもローマでもガラパゴス諸島でもバスで行ってしまうのではないか?と心配したりもしますが・・・あれば彼女は行くと思います。

 さて上海の路線バスはエアコンなしで1元(13円)から。エアコン付きでも2元からと格安です。最近どんどん新しい車輌が導入されているようで、電光掲示板やテレビなどが装備されているバスも増えてきました。
 メジャーな路線バスは日本より運行本数がかなり多く、さらにバスレーンが確保されている道路も多いことから、停留所でバスを待っていると次から次へとバンバンやってきます。この辺の使い勝手は「良い」と言っていいでしょう。

 上海市内を走る路線バスは無数にありますので、バスを利用したい人はまずそこらへんの新聞/雑誌を売っているスタンドなりおばちゃんなりから「路線バスマップ」をゲットする必要があります。値段は私も知りませんが、たぶん10元以下で買えると思います。
 マップには路線バスの番号がずらりと並んでいて、「22」とか「937」とか路線バスの番号別にそれぞれのバスがどういうルートを通るかが書かれています。利用する人はそれを見ながら出発する場所と到着する場所を探して、自分が乗るべきバス路線を確認するのですが、マップから正確にそういう情報を拾い出せるのは、せいぜい上海人とバスマスターくらいです。ただこれは私のカンですが、われらがバスマスターはたぶんバスマップを使っていないような気がします。

 言葉も分からず自信もなく、しかもアヤシいと感じたら路線バス利用は避けた方が無難です。何度も通うようなところでしたらまず最初にタクシーを利用して行ってみて、現地のバス停をチェックして、次回からのご利用とする方が間違いありません。
 私は一度バスの中で外地人のおっさんが自分の行きたい場所と全然違うところに来てしまい、マジで半ベソをかいている光景を見たことがあります。その時の運転手は笑っていました。こんなところにもいたいけな田舎者をいじめる大都会の冷たい一面があります。

 さてバス停には白や黄色の色とりどりの看板が掲げられており、それぞれの看板には路線バスの番号とともに行き先が書いてあります。みんなと一緒に待ちましょう、そのうちたくさんバスがやってきます。自分の乗るべきバスの番号さえ覚えていれば、バスのフロントガラスの上部にはでかでかと「22」とか表示されていますので、ここで乗り間違える人はあまりいないでしょう。

 ただラッシュ時には何台ものバスがひとつのバス停に殺到し、30m×二車線くらいがそれぞれ勝手なカタチで停車するものですから、結局どれも身動きが取れなくなって、自業自得という名のクラクションによる合奏を聞くことができます。まことに心安らぐ上海らしい風物詩と言えましょう。

 またそういう光景を見た何事にもおおらかな中国人運転手が「じゃ、ボクはこの辺で」というカンジでバス停からかなり離れたところに勝手に「ボクちんのバス停」を設置したりします。そんな時あなたが遠く離れた本当のバス停から「あ、私の乗るバスだ。もうすぐこっちに来るんだわ」とか思っていたら、向こうでバスから人がわらわら降りてきて、降ろすだけ降ろしたらブッブーッとか言って出発しちゃったりします。

 さあ、そういう時は隣にいた上海人のおばさんたちとともに速攻でバスに向かってダッシュしましょう。男も女も老いも若きも金持ちも貧乏人もみんな髪を振り乱し、足をもつらせながらバスに向かって走り出します。途中、日傘を振り回して周囲の人に痛い思いをさせますが、被害者に対する謝罪の優先順位は隣の家のネコの便秘問題より低く設定されています。
 息を切らせてバスに取り付いた人はバスを叩いて運転手に自分が乗り込むことをアピールする資格を得ますが、自分がバスに乗り込むと同時に一緒に走ってきた戦友とは縁が切れます。後から走ってくる彼らを置いたままドアが閉まって出発しようとももはやそれはそれで没問題です。

 上海の路線バスは運転手ひとりのワンマンバスが多くなってきており、基本的に「前乗り後ろ降り」です。だいたいどこまで行っても同一料金というケースが多いので乗ったらすぐに運賃を払います。私は『交通カード』しか使ったことがありませんが、その場合は運転手の横にある磁気板にカードをかざせば勝手に運賃を徴収してくれます。
 これがまたおもしろくて、私はいろいろ試しました。例えば2枚同時にかざせばどうなるのか?とか・・・すみません、話がずれました。

 もちろんワンマンではないバスもあって、そういうバスでは真ん中辺りにおばちゃんが立っています。おばちゃんはよく知り合いとだべっていますが、尋ねれば行き先を上海語で教えてくれる、ありがたいんだかありがたくないんだかよく分からない存在です。ときどき右折する際には小さな赤い旗を右側の窓の外に向かって出したりしていますが、あれは「巻き込まれんなよ」なのか「私が先に行くんだからオマエはそこで待っとけ」なのかはよく分かりません。

 中に乗り込むとプラスチック製の、日本だったら駅のホームにあるベンチのような椅子が並んでいます。はっきり言ってこんなものに腰掛けてバスに揺られていると、腰を悪くすること請け合いです。しかしそこは世界で一番椅子取りゲームが好きな中国人のこと、老いも若きも関係なく今日も椅子取りゲームに命を懸けます。あ、でも中国人の名誉のために言っておきますと、彼らは年寄りや妊婦さんなどにはよく席を譲りますよ。

 バスに乗っていて一番つらいのは朝夕のラッシュ時です。その混雑振りは想像を絶します。しかも真夏の朝のエアコンなしバスは最悪です。朝の強い日差しをまともに受けて、気温はぐんぐん上がり、あまりのまぶしさにカーテンだけ閉めて走ります。

 そこに大混雑です。しかもマナーのなっていない外地人がやけにでかくて汚い布団袋みたいなものを持ち込んでおり、その汚れをあなたがヴェルサーチやマックスマーラのスーツで拭き取ってあげる羽目になります。
 さらに工事現場で働く肉体労働者たちが洗濯したことのないような泥とほこりと汗をたっぷり吸ってすえた臭いのする作業服を着てがやがやと乗り込んできます。そのニオイは強烈で、アタマがくらくらしてめまいがします。さらに彼らの服に付いたほこりを拭ってあげるのもあなたのスーツですが、そのときにはもれなく土やペンキも付いたりします。

 あまりの息苦しさに窓の外を見ると道路は大渋滞で、排ガス規制のされていない大型車両からは黒煙と粉塵がもくもくと排出され、見ているだけで頭痛を誘います。トンネルの中に入ると排ガスの臭いが充満しており、後ろの打工のニオイとともにあなたを苦しめますが、渋滞のおかげでこの環境問題について考える時間だけは十分にあります。

 さて、新しいバスだけでなくもちろん古いバスもあって、中国の古いバスは座席がプラスチックでないことはいいのですが、ドアが完全に閉まっていなかったり床や天井になぜか穴があいていたりと、ノスタルジアを通り越して危ないんじゃないかと思うものまでバリバリの現役です。
 さらに2台分の車体を蛇腹でくっつけたロングバスや街中に張り巡らされた電線から電力を得るトロリーバスもあり、トロリーバスはときどき電力を得ている引っ掛け棒みたいなのが外れるのか、運転手がバスを降りてバスの後ろに標準装備されている長い鉤棒を使って電線に引っ掛け直したりしています。

 いよいよ目的地に到着して、降りるときは真ん中くらいにある扉から降りますが、日本のように「次停止します」のボタンがありません。めったにないことですが、もしバスがそのまま通り過ぎようとしているのであれば、わめき散らして「オレは降りる」意思表示をしなければなりません。
 このとき下手な中国語や日本語では、いくらわめき散らしても運転手は気がつかない可能性が高い(1勝4敗)ので、周囲にいる中国人にあなたが降りたいことをジェスチャーゲームかなんかで伝えて、彼らにわめき散らしてもらった方が確実(3勝無敗)です。

 どうです、乗りたくなったでしょう?


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あおい

ご紹介にあずかってしまいました・・・(オハズカシイ・・・)
私なんてまだまだヒヨッコですよ。歳はおいといて。
Tobermoryさんの書いたこの内容全てに「ふむふむ、そうそう」とうなずいていました。料金集めのオバちゃんはいるが、交通カードは使えないっていう路線が私が利用する路線に2つあり、やはりコインは必要だな、って思いました。

短期間でそれなりにバスを乗りこなせるようになったのは、私には2人の師匠がいたからなんです。このお二人、凄いですよ~~!
by あおい (2005-07-26 10:23) 

くま

( ̄○ ̄;)蓮花路の家楽福前で。。。重なりあったバスにオロオロして
バス停で唖然としながら。。。結局TAXI拾った軟弱@くまです。
3年で。。。1回しか乗った事ありません(; ̄ー ̄A
もっぱら地下鉄&TAXIです。
車掌さんの旗。。。あれは。。。
>私が先に行くんだからオマエはそこで待っとけ
に1票です。
今日から2泊で日本でしたね。。。
まだ、仕事だったりして
( ̄(エ) ̄)ノ ふぁいと~~
by くま (2005-07-26 22:46) 

チャイママ

ヾ(>▽<)ゞブッハハハッヾ( >▽)ノ彡☆ばんばん! 大連でよかった!
( T ▽ T )ノ_彡☆バンバン!
by チャイママ (2005-07-27 02:36) 

ぞんいえ

はじめまして。バスの話題につられた浦東在住の新人バスラーです。
冷静かつ暖かい目線の文章が魅力的で、最近お邪魔するようになりました。

「上海公交換乗指南」という、割と立派な小冊子があります(14.8元 恐らくファミマあたりで購入)。路線上の全てのバス停と、バスの走る道路の名前まで書いてあるので、とても便利で愛用しています(路線番号は抜けが多くて、それはちょっと…なのですが)。が、最近では、下調べをせずに、バス停を眺めて「これぞ」というバスを選び、それが家の近くのバス停にばっちり着いた時に、最大の喜びを感じております。
by ぞんいえ (2005-07-28 15:53) 

Tobermory

>バスマスターあおいさまの師匠はバスドクターでしょうか(笑)。コインが必要なバスは確かにありますね。小さな商店でも50元札、100元札でお釣りがないことがよくあるので、小銭はやはり必要ですよね。

>くまさん、ただいま。でも上海のバスに乗るのは難しいですよね。私も最近は全然乗ってません。というか、結構こりごりってカンジです(笑)。

>チャイママさん、ウケてもらったみたいで(笑)。大連はこんなことありませんか?

>ぞんいえさん、はじめまして。魅力的とはお恥ずかしい限りですが、楽しんでいただければ嬉しく思います。ところでバスマップは数種類あるようですね。またぞんいえさんのバス利用法はかなり魅力的です。
by Tobermory (2005-07-29 00:42) 

Yumi kim

こんにちは。バスの路線を調べようとしたら、たどり着きました。夫が上海人で度々上海に行くことがあるのですが・・。
いやぁ、このバス日記には大爆笑。
一人ニヤニヤしながら一気に読み終えました。
10月から1歳の息子を抱えて上海で4日間過ごします。
子供と2人、バスに揉まれてこよう、そう決心しました。
by Yumi kim (2005-09-09 15:44) 

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