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ビジネス通訳

 ずいぶん前のことになりますが、日本語が分からない中国人の総経理(社長)が日本で行われる販売会議に出席するときに、通訳のことで本社ともめたことがありました。

 私の主張は「現地事情に詳しいこちらの通訳(スタッフ)を同行させるべき」に対して、本社の主張は「費用がもったいない。本社にも経験は浅いが中国語通訳はいる。大丈夫だ」でした。結局本社の主張に押されて中国人総経理だけ日本に行かせたのですが・・・。

 結果は私の想像通り惨憺たるものでした。総経理は何もおっしゃいませんでしたが、言いたいことの半分も相手に伝わらなかった悔しさがありありと見て取れました。

 おまけにその総経理出張直後に本社からは膨大な量のフォロー依頼がやってきました。以下は本社から来ていたメールです。

 先般、○○会議で総経理が説明を受けられたパワーポイントの原稿を整理しました。先方による日本語の説明をAさん(本社通訳)が通訳しましたが、完全な理解が得られたか分かりませんので送付します。できれば、Bさん(現地通訳)が翻訳してくれれば有り難いのですが、如何でしょうか。
 添付の資料を参照頂ければ・・・

 以下長々と続くので割愛しますが、添付ファイルも含めると膨大な量でした。読めば読むほど本社の主張に屈した自分の至らなさに腹が立ちました。
「Bさんが翻訳してくれれば有り難い」とは、Bさんだったら良かったのに、ということですね。「大丈夫だ」と主張した本社からこれでは、どんな出張だったのかという思いが残ります。

 通訳はヒトとヒトをつなぐパイプです。その優劣は電話線とADSLに例えてもいいかもしれません。
 私自身も簡単な日常会話では通訳をこなしますが、各分野の専門家やエキスパートが集まって、それぞれが専門知識や最新情報を伝え合い重要事項を検討する会議においては、無理です。
 例えば市場の様子、人名や固有名詞をはじめ、経緯、財務諸表、技術課題に至るまで膨大な知識の上に発言に対する理解力と語学力が求められますので、どれかひとつでも欠けていては満足な通訳は無理でしょう。

 仮に全て日本語で行われたとしても、部外者には何を言っているのかちんぷんかんぷんです。それほど仕事や業界に精通した通訳というのは貴重品です。

 さらに基本的なことですが通訳としての資質を備えていること。例えば日本からのお客さまに対して中国人が「いつこちらへいらっしゃいましたか?」と尋ねて、通訳が「昨日です」と答えるようでは論外です。誰もオマエ(通訳)になんか尋ねていない、分かり切った質問でもそのまま伝えなくてはならない、通訳は究極の黒子なのです。

 通訳のことに限らず、本社の理解というのは出先の人間にとって永遠のテーマなんですが。


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コメント 3

くま

>本社の理解というのは出先の人間にとって永遠のテーマ
こっちに来て、何個もの地雷を踏んで、傷つかないと分からないですよ。
今回の記事。。。オイラならキレてます。
何事も、自分レベル(日本人レベル)で考えるってのが問題点ですよね~
話は変わりますが。。。オイラが先程アップした記事も通訳関連でしたが。。。
この記事見て、あっ!TBって思ったのですが、読み終えて。。。
ラベルの違いに( ̄m ̄〃)TBはやめました。
我が社に来た通訳ちゃん。当分の間は、会社の仕事内容等、通訳の準備業務からの開始で~~す。
by くま (2005-06-08 13:52) 

sanbonmatsu

外国で働くってことは大変なことですね。苦労がしのばれます。
by sanbonmatsu (2005-06-08 21:07) 

Tobermory

>くまさん
おっしゃる通りセンスの問題に帰結するかもしれませんが、きちんと指摘できなかった私のコミュニケーションに問題がなかったとは言えないなと反省しました。それでもキレたいことは山ほどありますね。私も「では、私の代わりにあなたがどうぞやってみてください」と言ったことがあります。

>えんくにさん
nice!ありがとうございました。

>sanbonmatsuさん
いえいえ、たいしたことはありませんよ。私もそうですが、きっと同じ上海で働くくまさんも、同じように笑うでしょう。たしかに苦労はありますが、異質なだけで日本で働く苦労と何も変わりません。sanbonmatsuさんもきっとご苦労なさっていることでしょう、上海からおつかれさまを申し上げます。
by Tobermory (2005-06-08 21:59) 

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