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中国に技術移転

 一般に中国人が考える技術と日本人が考える技術には大きな違いがあります。

 中国人は技術を「カタチあるもの」として捉え、品物のように扱えると考えますが、日本人は「カタチなきもの」として捉え、品物のようには扱えないと考えます。例えれば中国人は技術を「有形文化財」と捉えますが、日本人は「無形文化財」と捉えます。

 このように捉え方が異なると、中国に進出している日本メーカーでよく扱われる「技術移転」に対して方法論が異なります。中国人は「サンプルを見せろ」「図面を寄こせ」となりますが、日本人は「工程管理を見直せ」「従業員教育を徹底しろ」となるのです。

 技術は植物に例えることができます。あるものは雑草のようにどこにでも簡単に根付くことができ、あるものは水をやらなくても育ち、あるものは寒さに強いなどです。
 しかし付加価値のある技術の多くは畑で作る野菜のように、土作りから始まって、水をやり、肥やしを与えて、雑草を抜くなど手間をかけてやる必要があります。これは技術水準の維持、品質管理に相当する部分で、種まき(技術移転)だけでなく手間もかけてやってはじめて価値ある商品を生むと考えています。

 中でも先端技術とは特殊な環境で生まれ、特殊な環境で育った、そこでしか生育することのできない繊細な植物のようなものです。研究所の実験設備にあったような特別な植物を自宅に庭にポンと植えたところで、枯れてしまうのがオチです。枯れなくても期待していたような果実はできませんし、種子(次世代技術)も手に入らないでしょう。

 技術には土壌というものがあります。日本の技術が素晴らしいのではなく、そういう技術が生まれ、育ち、そしてまた新しい技術が生まれる日本の風土、土壌が素晴らしいのです。多くのメーカーの日本人管理職が中国で商品を生産するために技術移転しようと図っていますが、肝心の中国人が土壌が大事だということを分かっていない。
 そこで中国人の理解を放っておいたり、日本人管理職が未熟だったりすると「有名メーカーのMade In China」と呼ばれる有名メーカーなのにちょっとアヤシげな商品が市場に出てきてしまうわけです。

 技術そのものを移すのではなく、技術を維持し、新しい技術が生まれる土壌を作ってこそ、本当の技術移転なのですが・・・ニヤけたみんなの顔が目に浮かんできます。オマエら、本当にそれでいいのか?また何も考えてないだろ?お、ひとり目の色が違うな!ああ、Aくん、キミか・・・。


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くま

納得!ですね。A君を大切に!
オイラの場合。。。雑草に近いものなのに。。。
お前ら、除草剤まいてんじゃね~のか?ってな感じで。。。
土壌の差。。。
この差は、オイラが生きてる時代では埋まらないと勝手に思ってます。
但し、例外(成功者)も出てくると思います。
何故、成功したのか?周りは暫らくは理解出来ない。。。
ずっと理解できないか?いつかは土壌革命が起こるのか?
その前に。。。先ずは足元を耕さねば。。。
今後も大切に守る部分と、グローバル化に伴い変える部分を
オイラは、何処まで日本に居る人間に伝えられるか。。。
現地スタッフ&日本スタッフの教育っていうより。。。あえて、洗脳。
偉そうなこと書きました(; ̄ー ̄A 
by くま (2005-06-14 22:28) 

Tobermory

くまさんのおっしゃること、よく分かります。私たちが品質管理とひとことで言っても所詮『日本型品質管理』なんですよね。中国のシステムや商慣習上、絶対にマッチングしないところがある。アレは日本で生まれ育ったものですから。くまさんが言う例外はおそらく『中国型品質管理』の体現でしょうね。Aくんは・・・まだまだです(笑)。
by Tobermory (2005-06-14 23:10) 

あおい

仕事をしていない私が発表してはいけないかもしれませんが、有形、無形という点では、「サービス(気遣い)」というのも無形にあたりますよね?
見せろと言っても、ハイこれです、とはいきませんから。
桃栗3年、柿8年。
真の技術移転は一体いつ??
失礼しました・・・。
by あおい (2005-06-15 02:53) 

sanbonmatsu

なるほど、中国では技術を「有形文化財」と捉えるのですね。勉強になります。
日本のすごいところは、町工場や中小企業のレベルがものすごく高いところだと思っています。(当方、製造業ではないので間違っていたらごめんなさい。)
by sanbonmatsu (2005-06-15 22:29) 

Tobermory

>あおいさん、私もサービスは門外漢ですが、おそらく伝えるとすれば最も難しいもののひとつでしょうね。しかし中国でもニーズはあると思います。例えば上海市内を走るタクシーで「大衆」が市民に支持されている理由はおそらくサービスにあると思っています。

>sanbonmatsuさん、おっしゃる通り日本の中小企業のレベルが高いことは、私も技術立国日本の大切な長所のひとつだと思います。時代に合わせて必要な変化はやむを得ませんが、技術環境破壊に繋がるようなことだけはやめて欲しいですよね。
by Tobermory (2005-06-16 20:28) 

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